第75号 「夢中」は「努力」に勝る

 普通、人間は努力して何かを達成することを是と考えます。

 同じ結果を出すにしても、それに至るまでの努力が大きければ大きいほど高く評価されます。苦しい努力を続け、全力を尽くしたことで得られる満足感や自信は、「ただ単にうまくやれた」ことの快感に勝ります。

 「他人にはかなわない。うまく結果を出せない。いつまでも上達しない」と言った理由で努力をやめ、後になってその判断を悔やんでもどうにもなりません。しかし、努力が必要なのは言うまでもありませんが、辛く苦しいイメージが付きまといます。

 従って、一方では、努力しないと結果が出ないことよりも、努力せずにできることを選択した方が利口だという考え方もあります。自分の得意なこと、好きなことに夢中になることは、ことさら努力しなくてもすぐに身に付くし、努力を努力と思いません。「夢中」は、時間も疲れも忘れて没頭することであり、無意識のうちに「努力」を飛び越えて大きな成果につながるのです。

 本当に強い人は、苦しい努力を根気よく続ける人よりも、そのことが面白くて、つい夢中になった人のことを言うのでしょう。

 ただ、問題は、簡単に進める楽な道が自分にとって満足な道であるとは限りません。